彼氏

親に彼氏(彼女)を紹介しましたか?

昔、ケータイなんてなかった頃、彼女に電話するの、とっても苦手でした。家の人が出たりしたら呼び出すのが一苦労。しどろもどろでつないでもらっていました。逆に彼女からかかって来ても一苦労。うちは居間に電話を置いていたのでコードを延ばして扉から部屋の外まで伸ばしてコソコソ喋って、話した気がしませんでした。 もちろん高校生の時に彼女を親に紹介するなんて思いもしませんでした。

金曜日の出来事でした。 シンがサッカーの練習で帰りが少し遅くなったのですが、部屋に入り着替えはじめると、 横の階段をトントンと降りて来る音がして続けて「お父さん。」とミズの声。廊下の方を向くとそこには見知らぬ学生服の男が立っており、「彼、××君。」とミズはその後ろに立っていました。 テッチャンは一瞬頭が真っ白になり、何事がおこっているのか理解できませんでした。

かなり間が空いたとは思いますが、やっとのことで「はい、どうも・・・初めまして。」とか何とか言い、相手は「今晩は、××です。」と挨拶してくれたような気がします。というのも、言葉よりその子がおにぎりを乗せたお盆を持った姿が気になり、その意味を考えていたようです。

そういえば我が家は父子家庭になってからはあまり友達の家には行かせられないので、逆に「お友達は誰でも家に連れて来なさい。」と言っておりました。

もちろんクラブ帰りで学校へ迎えに行った際に友達も一緒に送って行った事はあるものの、これまでに我が家に連れてきた子は女友達を含めてもおりませんでした。 それがいきなり最初の訪問客が彼氏なんだから・・・

しかし、よくよく思い出してみたら前振りは週初めにちゃんとされておりました。

その時テッチャンはシンと先に夕食を食べはじめていて、途中で帰宅したミズが一緒に食べはじめたところ、いきなり「お父さん、今週は夜の会議いつ入っとうと?」と訪ねてきました。テッチャンが答えようとするとその前に矢継ぎ早に「今度彼氏に送ってもらうけん、その時家にあがってもらうけん!」と。

「はぁ?」という感じでした。次に「何しに来るとや。」と言いかけたのをグッとこらえて、「火曜と木曜は会議やね。」と答えるのが精一杯でした。

後に続く言葉も見つからず、とりあえず立ち上がり「風呂入ろ。」とその場を離れてしまいました。 後ろから「彼氏やらおったとー。」とシンが冷やかす声やらばあちゃんの声やら聞こえてきましたが、そんな話題に対して何を話して良いかもわからないテッチャンはその後一切その話題には触れませんでしたし、ミズも何も言ってはきませんでした。

その結果がこれですから、文句は言えませんね。日々常に子どもと会話を交わしているかと問われると、ミズとは特に高校生になってからはこちらが変に意識してしまい、避けていた気がします。

ミズが彼をきちんと家族に紹介しようとした気持を素直に受け止めてやらねばならないのでしょうが、父にはまだその器量がありません。

その晩は早く寝ました。何かモヤモヤしていたからなんですが、ハッ、と気付きました。なんか見たことあると思っていた彼は、文化祭での英語劇の登場人物の一人でした。

そう、それは白雪姫の王子様役だった彼でした。 どうりでどこか見覚えのある顔だと思ったはずです。

そんな事があった翌日、ミズは普段通り登校しました。シンも土曜日のサッカー練習のため、それから遅れること30分家を出ました。 雨の中いつもの通勤コースを運転してると横からシンが「あっ、ネエやん!」。見るとミズが昨日の彼と似たようなマフラーを巻いて傘をさして仲睦まじく歩いていました。

父は見事とどめの一撃喰らったのでした。

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